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*上の画像はStable Diffusionで"impacts of climate change on rice cultivation in Japan"のプロンプトで生成させた画像です。

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植物資源の利用、食生活に関する文献、ウェブに公開されているデータとその解析、DX・データサイエンスに関する話題、データ解析に用いたプログラムのコード(主にPython)などを紹介します。

日本の米生産への気候変動の影響_02

カテゴリー: 気候変動の影響

作成日: 2023-05-24

 気候変動が私たちの身近な生活や農作物生産に与える影響について調査しています。前回3種の対話型AIの、ChatGPt、Bard、Perplexity AIで日本の米の生産への気候変動の影響について回答させてみました。これらAIで共通した回答は、気候変動によって降水量や温度が変化することで、米生産に悪影響を与える可能性があることを述べています。 また気候変動によって稲作に適した条件が損なわれるため、農家が対策を講じる必要性があることを示唆しています。 Bardは、21世紀末に最大で28%の収量減少の可能性があると回答しました。Plexity AIの回答は、経済分析が行われていること、気温変化などの気候変動が日本の米生産に与える損失の大きさが計算されていることを特に強調しています。 今回は、Bardからのgoogle検索とPerplexity AIに示された出典のサイトなどから情報の確認を行いました。

日本の気候変動の状況

まず日本の気候変動の状況について 気象庁のホームページの資料を確認しました。年平均の長期的上昇が認められますが、降水量の長期的変動傾向は認められませんでした。

日本の年平均気温の経年変化

出典:「日本の年平均気温偏差の経年変化(1898〜2022年)」(気象庁ホームページより https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/an_jpn.html)

「日本の年平均気温は、様々な変動を繰り返しながら上昇しており、長期的には100年あたり1.30℃の割合で上昇しています。特に1990年代以降、高温となる年が頻出しています。」

日本の平均気温推移

細線(黒):各年の平均気温の基準値からの偏差、太線(青):偏差の5年移動平均値、直線(赤):長期変化傾向。基準値は1991〜2020年の30年平均値。

日本の夏(6〜8月)平均気温偏差の経年変化

稲の生育と収穫量に影響の大きい日本の夏の平均気温変動についてです。

出典:「日本の夏(6〜8月)平均気温偏差の経年変化(1898〜2022年)」(気象庁ホームページより https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/sum_jpn.html)

「日本の夏(6〜8月)平均気温は、様々な変動を繰り返しながら上昇しており、長期的には100年あたり1.19℃の割合で上昇しています。」

日本の夏の平均気温の経年変化

細線(黒):各年の平均気温の基準値からの偏差、太線(青):偏差の5年移動平均値、直線(赤):長期変化傾向。基準値は1991〜2020年の30年平均値。

日本の年降水量偏差の経年変化(1898〜2022年)

出典:「日本の年降水量偏差の経年変化(1898〜2022年)」(気象庁ホームページより https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/an_jpn_r.html)

「日本の年降水量には長期変化傾向は見られませんが、1898年の統計開始から1920年代半ばまでと1950年代、2010年代以降に多雨期が見られます。また、1970年代から2000年代までは年ごとの変動が比較的大きくなっていました。」

日本の年降水量偏差の経年変化

棒グラフ:各年の降水量の基準値からの偏差、折れ線(青):偏差の5年移動平均値。 基準値は1991〜2020年の30年平均値。

21世紀末に最大で28%の収量減少の可能性?

Bardの回答に「1世紀末に最大で28%の収量減少の可能性がある」とありました。この情報について確認しました。出典は以下の論文でした。
"Revision of estimates of climate change impacts on rice yield and quality in Japan by considering the combined effects of temperature and CO2 concentration"
(Journal of Agricultural Meteorology Volume 77 (2021) Issue 2 Pages 139-149)
 この論文では、最近の実験的研究により、CO2と気温の相互作用がイネの収量や品質に及ぼす悪影響が示され、これまでの影響評価では考慮されていないことが判明しました。CO2濃度と気温の相互作用を考慮した新しいモデルでは、全国の生産量は、前回の評価結果と比較して最大28%減少し、品質は悪化する可能性が示されています。

日本の農業生産への気候変動の影響に関する行政資料

  • 気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018 ~日本の気候変動とその影響~ 2018年2月 環境省 文部科学省 農林水産省 国土交通省 気象庁 (https://www.env.go.jp/content/900449808.pdf )
  • 農業生産における気候変動適応ガイド 水稲編 農林水産省 令和2年12月(https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/ondanka/attach/pdf/index-102.pdf)
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