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植物資源の利用、食生活に関する文献、ウェブに公開されているデータとその解析、DX・データサイエンスに関する話題、データ解析に用いたプログラムのコード(主にPython)などを紹介します。

日本学術会議審議回答の紹介 「研究DXの推進-特にオープンサイエンス、データ利活用推進の視点から-」

カテゴリー: 日本学術会議

作成日: 2023-03-24

 研究DXの推進に関する審議依頼への日本学術会議の回答が昨年12月23日に公開されました。1.研究データの共有・公開も含めたオープンサイエンスに対する日本学術会議としての考え方、2.大学・国立研究開発法人等において必要となる研究データ管理・利活用のための課題の整理と具体的方策、3.各分野の多様性を踏まえ、今後のデータ駆動型科学の振興のために考慮すべき事項、の3点の審議依頼に対して5つの提案がされています。要約内容を抜粋編集して紹介します。詳細は下記サイトでご確認ください。

URL: https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/division-8.html

 筆者は、プログラミングスキルを持つデータサイエンティストの裾野拡大と様々な分野のオープンデータベースの拡大を期待しています。

審議依頼

依頼日:令和4年3月23日

依頼元:内閣府大臣官房総合政策推進室、 内閣府科学技術・イノベーション推進事務局

依頼内容:

 日本での開催が見込まれるG7、G7科学技術大臣会合及びGサイエンス会合を見据え、オープンサイエンス分野で日本がリーダーシップを発揮するための方向性やそのためにアカデミアとして取り組むべき事項について、また、政府が示している取組の方向性に対する研究現場の対応状況や新たな課題の有無、更なる改善策等についての提案

  1. 研究データの共有・公開も含めたオープンサイエンスに対する日本学術会議としての考え方の取りまとめ
  2. 研究データの共有・公開も含めたオープンサイエンスに対する日本学術会議としての考え方の取りまとめ
  3. 各分野の多様性を踏まえ、今後のデータ駆動型科学の振興のために考慮すべき事項

日本学術会議の回答(抜粋・要約しています)

回答日:令和4年12月23日

 日本学術会議は、オープンサイエンス・データ利活用推進小委員会を設けて議論を行った。オープンサイエンスデータ駆動型科学は、多様な分野において進展し、より開かれた知識を柔軟に活用した新しい研究スタイルの確立や、社会課題解決に向けた連携が進みつつある。その一方で、この分野における我が国の取組は必ずしも十分とはいえない。データ駆動型科学を中心とした新しい研究基盤の構築に向けて、欧米の主要国から遅れをとることに、学術界としても危機感を抱いている。
 小委員会ではこのような認識から、多くの分野におけるデータ駆動型科学の先進的実践に関し事例を聴取し、我が国の現況を把握するとともに、データ駆動化を加速するための要件について議論し、聴取したような事例が他の分野においても広く実践・応用されるためには、どのような方策と体制整備が必要であるかという観点から、オープンサイエンスを推進するデータ基盤とその利活用に関する検討委員会、同委員会オープンサイエンス企画分科会及び小委員会において審議を重ねた。

(1) 研究データの共有・公開も含めたオープンサイエンスに対する日本学術会議としての考え方
 日本学術会議は、データ駆動型科学が近年広く進展し多様な成果を生み出しており、中核ともいえる研究データの共有・公開を、推し進めようとする考えに賛同。データは科学的発展だけではなく人類の社会生活にも多大な恩恵を与えている。

(2) 大学・国立研究開発法人等において必要となる研究データ管理・利活用のための課題の整理と具体的方策(管理・活用体制の整備方策、人材確保・育成方策など)
【提案1】研究者が容易に利用可能な研究データプラットフォームの構築
 研究者が容易に利用可能な研究データプラットフォームの構築を提案している。データを扱う際の種々の手続きに係る負担が限りなく小さくなる。大規模な開発により加速することが不可欠である。EU では約 10 億ユーロの予算を投下し、デジタル技術を駆使した広範な研究開発により European Open ScienceCloud の構築を進めている。統合イノベーション戦略推進会議は、国立情報学研究所(以下「NII」という。)の NII Research Data Cloud を中核的なプラットフォームとして位置付け、NII はその開発を 2017 年より進めているが、より大規模な開発により加速することが不可欠である。
【提案2】データプロフェッショナルの育成と多面的な研究評価の実現
 データ駆動型科学があらゆる分野において推進されるためには、人材や関連のスキルが浸透し、プールされたデータプロフェッショナルが全国の大学に協力できる仕組みの構築が望ましい。
【提案3】モニタリング機構に基づくデータ駆動型研究の不断の改善
 研究データの他者との共有がどの程度進められているか、それによって成果が拡大しているか、データに関連するツールはどの程度利用されているか、データはどの程度容易に検索できているかなど、データ駆動型研究環境を可観測化し、不具合を常に監視するモニタリング機能の開発や運用を担う機構の整備が肝要である。そのためには、研究成果を体系的かつ長期的に、また分野横断的に学術知識情報として集約する体制が不可欠である。

(3) 各分野の多様性を踏まえ、今後のデータ駆動型科学の振興のために考慮すべき事項(研究者間の連携、情報技術や計算資源の活用事例など)、データ共有への具体的取組方策(データ共有へのインセンティブ付与のための方策、分野間連携のためのコミュニケーションの在り方など)
【提案4】研究自動化(ARW:Automated Research Workflow)に向けた情報技術、計算資源の集約
 ARWでは、科学的知見を獲得するプロセスの圧倒的加速化に関して手応えが得られつつある。スパコン等の大型実験装置を連成した大きなクローズドループの形成と、ループを成すARWごとのオープンデータ化により、研究全体の効率化を図ることができる。
【提案5】分野を越えた連携を実現する FAIR 原則の追求
 多様な分野間の連携においては論文だけではなくデータを介することにより ARW の更なる加速が期待されるが、いかなるメタデータ付与がデータの利活用に資するかは分野依存性が高い。FAIR 原則に基づき、各分野における積極的な分野間連携の実践が望まれ、また、その経験値の共有を可能とする取組が推奨される。日本学術会議や学会等において、FAIR 原則を追求する踏み込んだ議論が期待される。
【提案6】法制度面でのデータガバナンスの構築
 法制度面でのデータガバナンスの構築がデータ駆動型科学を推進する。

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