大豆とコーン

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植物資源の利用や食生活に関する文献、ウェブに公開されているデータとその解析、DX・データサイエンスに関する話題、データ解析に用いたプログラムのコード(主にPython)などを紹介します。

大豆ミートの評価について ー文献、サイト情報ー

カテゴリー: 大豆蛋白・大豆ミート、日本の研究開発動向の見える化

投稿日: 2024-03-01

 健康、蛋白質供給、環境負荷などから国内では大豆による代替肉、すなわち"大豆ミート"への関心が高まっています。2022年2月24日には大豆ミート食品類の日本農林規格(JAS規格)が制定されました。さらに、2023年9月1日には日本大豆ミート協会も設立されました。
 日本発の大豆ミートの技術はアジアからさらには欧米まで広く大きな市場で利用されるポテンシャルがあるのではないかと思います。
 前回の調査では2021年をピークとして大豆ミートへの関心は低下傾向にありますが、ニュース記事での企業活動は活発で、大豆ミートと謳わなくても業務用の食品素材としての需要は高まりそうです。2023年は大豆ミートとしての大豆タンパクの組織形成、成型技術は民間の研究者がリードし、市場への普及に関するマーケティング的な研究は大学の研究者が論文を公開していました。今後、消費者の理解がさらに進み、大きな話題となる食品の出現が期待されます。
 そこで今回は大豆ミートの官能評価に関する文献、サイト情報ついて調査しました。

大豆ミートを用いた食品の品質調査とアンケート

 2023年は大阪樟蔭女子大学の研究者による品質調査報告が2件と2022年にTOKYO GASのサイトの記事がありました。

大豆ミートを用いたハンバーグの品質評価

 レトルトパウチの大豆ミート(ミンチタイプ)を用いて,動物性副材料を使用した大豆ミートハンバーグと動物性副材料を使用しない植物性のみの大豆ミートハンバーグを調製し,合いびき肉ハンバーグと比較しています。大豆ミートを用いた2種類のハンバーグの物性は,やわらかくて脆く、官能評価では,大豆ミートを用いた2種類のハンバーグはかたい,パサつく,ばらける,おいしさや総合評価は好ましくないと評価されています。肉特有の粘りが足りていないようです。以上より,大豆ミートを用いたハンバーグは,調理方法や副材料のさらなる検討と共に,肉の代用としてではない「新しい料理」としての認識の普及が必要であると報告しています。豆腐ハンバーグと同様に新たなハンバーグ食品として位置づけすることも重要のようです。

大豆ミートを用いたそぼろ料理の品質評価

 ミンチタイプの乾燥大豆ミートを用いた料理の性状や嗜好性を知るために,3種類のそぼろ料理(ミートソース,麻婆ソース,ドライカレー)を調製し,各種ひき肉(牛ひき肉,豚ひき肉,鶏ひき肉,合いびき肉)との比較を行っています。官能評価結果からミートソースと麻婆ソースについては各種ひき肉よりも色が薄い,やわらかい,香りが好ましくないと評価されましたが、ドライカレーではいずれの項目も各種ひき肉との差がなかったそうです。相性の良い、悪いの要因を明らかにして、相性の良い料理の幅を広げて行くのが重要ですね。

大豆ミートを家庭で美味しく食べるコツは肉と半分ずつ!東京ガス都市生活研究所・食情報センター

 このサイトの記事はMICROSOFTのCopilot GPT-4で見つかりました。2022年3月18日に公開されています。同社の都市生活研究所と食品情報センターが実施したアンケート調査について取り上げています。
 1,200人へのアンケートでは、大豆ミートを家庭で調理して食べたことがある人は約16%、今後、家庭で大豆ミートを調理して食べることに興味がある人は32%でした。また大豆ミートを食べたいと思わない理由として、「おいしくない・おいしくなさそう」が約33%でtopでした。
 さらに調理実験を行って、大豆ミートと肉の比率を変えて調理したハンバーグでは、大豆ミート50%が評価が良かったそうで、おすすめとしています。

後記

 2022年JAS規格、2023年に日本大豆ミート協会設立と順調に立ち上がった大豆ミートですが、2023年は大豆ミートの販売の低下が報じられ、関心の低下、公開された特許数、文献数の低下が認められました。今回、大豆ミートを使用した食品の官能評価では、いまだ肉類とは差があるようです。さらなる、大豆蛋白の組織化、風味改良の基礎的研究が求められています。2023年度に公開された大豆タンパクに関する研究論文を調査していますが、日本人の大学の研究者による論文が見当たらないのが心配ではあります。官民で協力してぜひ世界に大きな市場を展開することを期待しています。
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