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*上の画像はStable Diffusionで"impacts of climate change on rice cultivation in Japan"のプロンプトで生成させた画像です。

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植物資源の利用、食生活に関する文献、ウェブに公開されているデータとその解析、DX・データサイエンスに関する話題、データ解析に用いたプログラムのコード(主にPython)などを紹介します。

気候温暖化による世界の主要穀物生産への影響に関する文献紹介

カテゴリー: 気候変動の影響

作成日: 2023-08-30

 気候変動が私たちの身近な生活や農作物生産に与える影響について調査しています。最新の気候変動に関する政府間パネル (IPCC) 第 6 次評価報告書 (AR6) は、異常気象を含む人為的気候変動がすでに悪影響を引き起こし、世界の食料安全保障を脅かしていることを示しています。(In Climate Change 2022: Impact, Adaptation, And Vulnerability. Contribution of Working Group II to the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change. Edited by: in Press; 2022.)
 大豆を始め主要な作物・穀物への気候温暖化の影響についてGoogle ResearchとGoogle Scholarによる検索結果から、5年以内で比較的被引用数の多い3レビューと米国のコーンベルトにおける大豆とトウモロコシの生産への影響の最新の予測についての論文を紹介します。

地球温暖化による穀物生産被害は過去30年間で平均すると世界全体で年間424億ドルと推定>

 農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)のニュースリリース(情報公開日:2018年12月11日)です。元の論文は Crop production losses associated with anthropogenic climate change for 1981–2010 compared with preindustrial levels です。Google Scholarでは 被引用数: 90です。

 農研機構、国立環境研究所および気象庁気象研究所との共同研究で地球温暖化が主要穀物の過去30年間(1981-2010年)の平均収量に与えた影響を、世界全体について評価し、温暖化によりトウモロコシ、コムギ、ダイズの世界平均収量がそれぞれ4.1%、1.8%、4.5%低下したと推定されたそうです。域別の影響については、トウモロコシ、コメ、コムギ、ダイズのいずれについても、温暖化により高緯度地域で収量が増加し、低緯度地域で低下したそうです。

Climate change has likely already affected global food production

 2019年公開で、被引用数: 584の論文です。

 気象データと報告された作物データを用いて線形回帰関係を構築し、観測された気候変動が世界の上位10作物(大麦、キャッサバ、トウモロコシ、アブラヤシ、菜種、コメ、ソルガム、大豆、サトウキビ、小麦)の収量に及ぼす潜在的影響を、~20,000政治単位で評価しています。これらの10作物では、消費可能な食料カロリーが気候温暖化の影響で平均で1%程度(-3.5×1013kcal/年)減少したと推測しています。

Research trends and gaps in climate change impacts and adaptation potentials in major crops

 2023年公開で、被引用数:4の論文です。農研機構が参加しています。

 食料安全保障を確保するために必要な気候変動に対する作物の適応に関するメタ分析のレヴューレビューです。2021年から2022年の間に発表された4つの主要作物に関する203件の研究をスクリーニング・分析しています。特に穀物の品質への考慮がほとんどされていないそうです。また現在温暖な地域では作物の適応によるリスク低減効果が大幅に小さくなっているそうです。

Simulated Climate Change Impacts on Corn and Soybean Yields in Buchanan County, Iowa

 2023年公開で、被引用数:4の論文です。

 米国のコーンベルトの中央に位置するアイオワ州ブキャナン郡のトウモロコシと大豆の収量に対する気候変動の影響の予測についての論文です。大気温度が上昇し、降水量が著しく変化すると、結果としてトウモロコシと大豆の収量が大幅に減少し、実現する気候変動シナリオにもよるが、トウモロコシの収量は最大29%減少し、大豆の収量は2100年までに通常の増加傾向から最大24%減少すると予測されるとの結果です。

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